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イ・ギホ 舎弟たちの世界史

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イ・ギホ 舎弟たちの世界史


    タイトルからして韓国ヤクザの戦後発展史かと思いましたが、小説でした。全斗煥が大統領になり、1982年には釜山でアメリカ文化院放火事件が起こり、赤狩りが国を挙げて蔓延していた頃を背景にした小説です。

主人公のナ・ボンマンは孤児上がりで、文盲蒙昧で、「名前と住所、鶏の丸揚げ、鶏肉、若鳥、オットッギてんぷら油、ビアホール、京郷新聞、毎日経済新聞」だけしか文字を知らない人です。というのは唐揚屋や新聞配達のアルバイトをしていたからです。同じ孤児の女性に運転免許を取ることを勧められます。で、学科試験で何度も落ち、アルバイトでためた金の半分を試験ブローカーに渡し、ズルで運転免許を取得し、タクシーの運転手になります。彼女とも同棲し、キスまではさしてくれますがどういうわけか性交まではさしてくれません。平和な毎日が続きますが、ある日新聞配達の自転車の子供との接触事故を起こします。子供はびっこを引きながら離れていきましたが、翌日ナ・ボンマンは軽微な事故の報告を警察署に届けます。漢字が読めないものですから、交通係ではなくて保安局に出向いて署名してしまいます。受け付けた刑事も軽微な交通事故とわかっていたのですが、いろいろな事情が重なり合い、ナ・ボンマンは政治犯として捕まり、さんざん拷問を受け、調書を書くことを強要されます。書かれた調書はいつも「鶏の丸揚げ、鶏肉、若鳥、オットッギてんぷら油、ビアホール、京郷新聞、毎日経済新聞」だけで、またさらに拷問を受けます。このようなことを3度4度と繰り返すうちに、保安局の調べ官もナ・ボンマンが文盲の輩とわかり、調べ官が書いたものをナ・ボンマンが書き写せるようにします。何百枚と書き写し、何とか様になるようなものが出来上がると、これを調書にし、晴れてナ・ボンマンはタクシー運転手に復帰し、この取調官を載せ、この調書を運ぶ途中で、ナ・ボンマンは電信柱に故意に衝突させ、この取調官に重傷を負わせ、逃げ去ったというのが結末です。赤狩りの季節にはナ・ボンマンのような無辜の人たちが多く犠牲になっていたのでしょう。

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