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井伏の将棋は体力将棋のようです。番数を重ねて、相手が疲れ始めたら勝つ将棋です。小説でも見てわかるように、きらびやかな才能が横溢しているようなものではありません。地味で平凡で日常的です。酒を呑むのも、長い時間がかかります。付き合い切れないで、ひとり去り、二人去りして、井伏は最後にこう言うのです。「近藤勇ただ一人」
井伏は庄屋の息子で裕福だったのでしょう。福山中学校(誠之館高校)出て早稲田に入ります、が、教授との諍いから中途退学します。同時に別の学校で絵も習っていたのですが、それもやめ、文学一本に絞ります。小沼丹は学生の同人誌に小説を書いて井伏に褒められ、お礼かたがた井伏の家に行った時、将棋ができるというので、それから長い付き合いになります。小沼丹も早稲田に入り、そこで教授になっています。
小沼丹の言うところ、はじめは自分の勝ち数が多いのですが、番数が重なると次第に井伏の勝ち数がまさっていくと書いています。将棋も体力勝負なところがあります。いくら才能があっても体力がないと悲運な将棋指し升田幸三ようにタイトル数では弟弟子の大山に大きく溝を開けられています。才能だけでは晩年までもたないのです。何よりもまして人間に必要なものは体力です。元気と健康があれば、どんなことでもなんとかなるのです。