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小説家や随筆家のおカネに関するアンソロジーです。コロナによる自粛経済によって私もそろそろお金がないといった状態になるかもしれないと思うと、この雑文集を真剣に読むことになります。
寺山修司の「手相直し」では生命線も頭脳線も短いという自分の手相を直してもらうために、柱時計を持ち出し質屋で換金してその費用に当てようとしたのですが、その柱時計では500円も借りられなくて、結局手相直しは諦めたということです。手相の生命線では30歳くらいまでしか生きられないと出ていたそうですが、30過ぎて自分の手相を見ると、手相直しをしようと思った子供時代を思い出して「侘しく」なると書いています。修司は48歳まで生きていますが、やはり短命と言われるでしょう。私なら修司に500円も出しておまじないをしてもらうより、自分の手を揉み、生命線を強くしなさいとアドバイスするでしょう。手のモミモミは脳の活性化を生み出し、有効なホルモンを照射で全身にみなぎらせるということで健康になるということです。
赤瀬川原平は貧乏な時偽造定期券を使っていたと告白しています。たとえ年月が切れていても、堂々とした態度で改札を通り抜けると、呼び止められることはなかったということです。しかしなかには慧眼な職員もいて、一度追いかけられたこともありましたが、逃げ切っています。むかし定期券の偽造で何百万円も徴収されたニュースもありました。何年間も使っていたのでしょう。赤瀬川原平も今は裕福になっているのですから、この駅の職員室にこの雑文で得た金で菓子でも買って届けたらと思うことです。
敗戦後にほんのすべてが変わったと思いがちですが、敗戦を境にして明治生まれや大正生まれが全て死んだわけではなく、アメリカ的民主主義になったとしても、それにそぐわない多くに人々がいたでしょう。占領軍もはじめは共産党の理念を持って日本を改革しようとしていましたが、ソ連との対立が深まり、占領軍も24年頃から反共路線に切り替わります。それで敗戦当時公職追放になった人々や、かつて軍で活躍した人々が復活し、CIAのエイジェントになったり、直接的に謀略機関に雇われたりします。現首相の安部の祖父も戦犯でしたが、復活して首相になっています。
人間長く生きると、いくら私のようにボサッと生きていても、時代の流れを感じることができます。大政翼賛会を見るまでもなく、昭和天皇崩御前後の自粛、昨今のコロナの自粛を見てわかるように、日本人は同調精神が強いというか、逸脱を非常に嫌う民族です。この狭い土地でいわば近親相姦並みの近縁者と結婚し続けたのですから、順応な家畜のような人間が多く生まれたのでしょう。何しろ狭い土地で近隣者との軋轢を避けるためにはおとなしい人間が喜ばれます。ロシアの実験によりますと、野生のキツネを育て、気性の穏やかなキツネだけを交配するとイヌのように人間になつくキツネが数世代でできあがったといことです。戦前は軍人で捕虜になったら死ねと言われていました。死に切れなった捕虜にちょっとした親切を施すと、味方の情報を洗いざらいさらけだしたということです。日本の都市を爆撃したアメリカ空軍はこれら日本人の情報が参考になったといっています。つまりお人よしなのです。ジュネーブの捕虜協定を知っていれば、待遇改善を要求したかもしれませんが、命が助かっただけで大感謝しているのです。フランスでもアメリカでもマスクを付けるのに大反対している人々もいます。とうてい日本ではそのような運動は起こらないでしょう。
蒸留家とは何だということでこの本を読んだのです。果物、葉っぱなどを発酵させ、熟成したところで蒸留器にかけ、それらの植物の匂いのあるアルコール分を取り出すということです。銀行から4000万円借り、クラウンドファンディングでも多くの人々から金を集めてスタートしています。もとは書店経営で、知的なお客さんも多く、環境問題から農業へのトレンドで、そういったお客さんが賛同して、そうしたファンドも出来上がったのでしょう。酒類販売ということで税務署の認可、また食品製造ということですから保健所の認可も必要です。これに結構時間がかかっています。1年以上も待っていますから、少ない予算でぎりぎりでやっているので、一時期江口宏志は自分の神経がおかしくなりそうだったと言っています。役所には役所の言い分があるだろうと思いますが、真面目な人がやっているのだとわかれば、少しは融通をきかしてもいいのではないかと思います。暴力団が陰にいるかもしれないキャバクラの認可と違うのですから。日本はここ何十年間衰退しているようですが、若者が何かをやろうとするときにネチネチといいがかりをつけるようでは、何も新規なことが起こらなくなります。少々の失敗を恐れていては大きなことは出来ません。ウーバーイーツで自転車をこいで少ない日当を稼ぐ若者がいてもいいかもしれませんが、(これもネチネチの一種かな)、電動自転車を作ってみるとか、この夏このように暑いのですから日傘に太陽電池パネルを取り付け、日傘の下はクーラーで涼しくなっているという発明を考えたらどうかなと思ったりします。
ニュートンは学生時代から金貸しをやっていたそうです。造幣局の役人になってから、投資を行い、死んだときには、流動資産が3万2千ポンド、現在に換算して16億円も貯めていたそうです。ニュートンを詐欺師呼ばわりをするには少しおかしいと思われますが、あえて言うなら、財務省の役人であったから、今で言うところのインサイダー取引でもしていたということで、東谷暁は詐欺師と言っているのでしょう。南海会社株では大損を食らっているのですから、彼の投資が全て成功したわけではなく、ただ学生時代から地味な生活をし、余った金を投資していたら結局死んだときあれほどのカネが残ったということでしょう。
本当な詐欺師はチャールズ・ポンジでしょう。イタリヤ野郎で、詐欺の原型を作った人です。あなたの投資金額を何ヵ月後には2倍にして見せますといった類の詐欺です。はじめのころは集めた金を利子に回し、信用を得ます。そうしておいてなおいっそうの資金を集めてドロンするわけです。企業活動は一切無く、集めた金を利子に当てるだけの自転車操業です。これを原型にしていろいろなタイプの詐欺がでてきます。
「自然界は予測できるが、人の心は予測できない」
だから経済学は学問というよりは、競輪競馬の予想誌でしかないといえるでしょう。
エスニックからネイション、部族から国家という風に進化したのでしょう。グローバリズムが進むと、国家からEUのように国家の連合体になるという人もいますが、アントニー・D・スミスはどうも否定的なようです。現在のEUもイギリスの離脱により分裂の様相をきたしています。ここに至ってアメリカもトランプが大統領になり、アメリカファーストになり、アメリカ白人ファーストのナショナリズムが勃興しています。
ナショナリズムが先かネイションが先か?ゲルナーがこう言っています。
「ナショナリズムとは、ネイションが自意識にめざめることではない。むしろナショナリズムは、ネイションが存在していないところにネイションを創り出すのである」
アメリカもイギリスとの関税問題でナショナリズムを覚醒し、それが合衆国を作り出したといえそうです。現在では雑多な人種間の軋轢から今のところ多数派の白人種が400年前アメリカ大陸に国を建設したのは自分たちだというナショナリズムにしたっているのでしょう。部族間、人種間、宗教間に溝はなかなか埋めることができません。まさしくこれらの中に自己のアイデンティティーが詰まっているからです。他人の体臭には鼻をつまみますが、自分の体臭には気づかないというところの人間間に悲劇が起こるのでしょう。