「イラストレイテッド・ポリス・ニュース」は19世紀後半の絵入り週刊新聞です。写真を印刷する技術がなくて、絵師によって事件現場、犯人、被害者の絵を描き、かえってそれによって事件の生々しさがよくでています。
よくわからない事件もあります。夫が妻を縛り付けて、妻の足裏をくすぐったら、妻がそれ以降気が狂ったというニュースです。世の中にはこのようなこともあるのだと驚いてしまいます。
ヨーロッパでも家族間の殺人が多い。育児ノイローゼの母親の子殺しも多い。この時代になっても魔女狩りのおばあさん殺しがあります。ビィクトリア時代、格差が拡大し、貧窮者の自殺者も多い。おまけに決闘まであって、気球に乗って決闘したりしています。
事故では馬車の暴走、中には自転車にぶつかって死んだおばあさんもいます。
このころのイギリスは死刑を公開していて、死刑は朝行われるので、真夜中から人が集まり、コーヒー売りのおばさんも出て,おおにぎわいだったそうです。イギリスでは絞首刑です。日本の姦通した男女の死刑も載っています。1875年7月31日の記事ですが、男は磔、女は牛につながれ八つ裂きの刑になったと伝えています。絵を見ますと、女は西欧人に見え、武士らしきもの描かれていますが、服が不自然です。絵師が想像で描いているのですから、仕方ないでしょう。1875年は明治8年ですから、このような刑は行われてはいません。報告したイギリス人旅行者のほら話に新聞社が騙されたのでしょう。