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読書

アラヴィンド・アディガ グローバリズム出づる処の殺人者より


     このタイトルは翻訳者がつけたもので、原書のタイトルは「
The White Tiger

(白いトラ)いうものです。この物語を語る主人公が小学生の時、視学者が来て、唯一文字が読めたのができたのが彼で、それによって視学者から、ジャングルで白いトラは珍しいように、お前も白いトラのようなものだといわれているのです。

私はこのタイトルから、グローバリズムは大量の殺人者を生み出すのはないかという社会学者が書いたものと想像していましたが、なんと小説でした。小説でも近来のインドの状況を記録したドキュメントと思えば、余り小説を読まない私でも、興味を持って読めるでしょう。自分のことを物語る主人公のカーストは菓子を作る職人のカーストですが、第二次世界大戦終了後イギリスが撤退し、インドは混乱し、彼の父は力車として働き、肺結核になって死にます。彼が小学校を中途退学しなければならなくなったのは、従姉が結婚したからです。インドでは花嫁に多くの金品をつけて送り出します。一家は貧乏になり、それによって彼も喫茶店の石炭割りに雇われます。菓子を作るカーストとは茶もいれ、料理も作るというカーストかもしれません。その後地主の運転手として雇われても、主人に対して茶も入れ、料理も作っているのですから、料理人の中の一カーストかもしれません。最終的にはこの主人公は地主の次男坊を殺し、次男坊が持っていた賄賂の大金を盗り、AIのアウトソーシングのムンバイで、日本車20数台を持ち、深夜そこで働く従業員たちの送迎をして、その地で成功者になります。たとえ警察署内に主人公の手配書が貼ってあっても、10億人もいるのですから、わからないのか、それとも捕まえる気がないのかで、主人公は警察署長に賄賂を送って仲良くなり、捕まることはありません。会社の車が子供をひき殺しましたが、警察のひきもあり、何とか円満にまとめています。

この本で気になることがあります。日本人が携帯を作ったのは、その電波障害で白人たちの脳を破壊することにあるんだという、主人公の独白があることです。主人公はデリーでお抱え運転手をしているとき、カネを溜めて、白人金髪の女とホテルでセックスしようとした時、その女の髪が根本で黒いのに気づき、金髪ではないと騒ぎ、ホテルの支配人から殴られ追い出されています。インドでも白人コンプレックスがあるということがわかります。インドでは白人コンプレックスの代わりに日本のトヨタや電気製品が彼らの希望になっているようです。2008年時点では。

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