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読書

アービング・ストーン アメリカは有罪だ 下


        下巻では、四つの有名な事件の裁判についてダロウの活躍を書いています。一つ目はシカゴでの黒人発砲の事件です。白人居住区内に歯医者の黒人が家を買い、移り住みます。その日のうちに、白人たち500人が彼の家を取り巻き、石を投げ始めます。それで黒人は銃を撃ったのですが、群集の一人が死にました。逮捕されて、裁判になったのです。警察では群集などいなかったといい、そこの町内の白人も石を投げたことがないと証言します。そこでダロウがかってでて、証言を逐一翻します。とうとう死んだ人の銃の弾は混乱した警察官が発射したものだということを証明し、黒人は無罪になります。

二つ目は、大金持ちの息子、若い17歳の若者たちの犯行を弁護したものです。一人はレオポルドといい、18歳でシカゴ大学を卒業し、もう一人はローブといい、17歳でミシガン大学を卒業している秀才たちです。この二人がやはり大金持ちの息子フランクス少年を殺し、身代金をとろうとしますが捕まり、裁判になりました。二人は自供し、大金持ちの息子ゆえの、一般市民の怨詛のため、縛り首はまぬがれない世論の状況になってしまいます。そこでダロウは慈悲と寛容の精神を、かつ犯罪者が未成年であることを陪審員に重々と説き、縛り首から終身刑に変えることができました。はじめローブの伯父がダロウに頼みに来た時、終身刑に変えてさえくれれば、お金はいくらでも支払うといって、世間の予想では百万ドルにまでなっていましたが、裁判が終わると、3万ドルしか払いませんでした。この伯父の別れ際の言葉が、金持はシブチンということがよくわかるというものでした。

「ダロウ、君も知っている通り、世の中には、この事件のような裁判で名声を得るチャンスがつかめるなら、自分のほうから大金を積んでもいいと考えている優秀な弁護士がたくさんいるんだ」

恩義にあずかってもこのようなことを言うのでは、彼らの息子にはおかしなものが出てくるというのがわかるような気がします。

三番目は「進化論裁判」です。進化論を教えた高校の教師が州法に違反するということで逮捕された事件です。ダロウは裁判で聖書主義者のブライアンをコケにし、社会の笑いものに仕立てました。しかし未だにアメリカでは宗教が政治を動かしています。

最後はハワイでの海軍将校の妻の強姦事件から、その強姦事件の容疑者殺害までになった事件の裁判です。白人の妻を強姦した容疑者は、日本人とハワイ現地人とがいて、将校はまず日本人を拉致し、殴ったりして自白させます。後で日本人は脅迫されて言ったことで事実ではないと反論します。そこで将校と同じ海軍の水兵二人でハワイの現地人を捕まえ、これも暴行を加え、自白させます。自白したところで水兵の一人が銃でこの現地人を殺します。沖縄でもそうですが、アメリカ兵がいると婦女暴行が絶えません。ハワイでも人種問題が絡み、単なる強姦事件では収まりきれない状態になってしまいます。ダロウは殺人を犯した水兵を無罪にさせ、同時に強姦された女性の裁判も切り下げさしています。水兵を無罪にするかわりに、強姦者も特定しないし、その裁判もしないということで結着つけたのです。

最後にダロウがいかにアメリカで有名であったかの言葉を紹介しておきましょう。

「われわれの時代の偉大なアメリカ人を三人あげれば、それはルーサー・バーバンク(植物改良家)トーマス・エジソン、そしてクラシンス・ダロウであろう。バーバンクは大地の力を解放することに貢献した。エジソンは自然の力を解放することに貢献した。そしてダロウは人間の精神を解放することに貢献したのである」(ある牧師の言葉)

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