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読書

コリン・グレイ 現代の戦略


         英米の国籍を持つコリン・グレイが英米の敵ロシアや中国にどのような戦略を思い描いているのかと思って読み出しましたが、さっぱり具体的な戦略は見えてこなくて、要領が得ないまま、眠りながらこの大部な書を読んだような気になりました。ドイツの戦術家クラウゼビィッツの「戦争論」からたびたび引用していますから、200年前のプロシャの軍人の考え方がコリン・グレイに影響を与えているのでしょう。クラウゼビィッツの最も有名な言葉は次のようなものです。

「戦争とは他の手段を交えて行なう政治的関係の継続以外の何ものでもない」

日本が第二次世界大戦に負けたのは、この格言を忘れたことによります。政治の一部門に戦争があるのであって、軍部がでしゃばって政治をやりだすとろくなことにはならないということです。中国本土にゾクゾクと軍隊を投入して、個々の戦闘には勝ちますが、全体的に観ると戦線が広がっただけで、収拾がつかなくなります。その点蒋介石は、欧米の居留地がある上海を日本軍に攻めさせ、日本の印象を悪くさせようとした政治的見地に立って作戦を立てていたのです。毛沢東は日本軍からは逃げたばかりで、消耗戦に導き、時折ゲリラなどをしていただけです。毛沢東の考え方がよくわかる事例があります。戦後中国とアメリカが対立するようになって来た時、毛沢東はこう言っています。中国人がアメリカの核によって何億人も殺されようとも、まだ何億人も生存している。しかしアメリカはたかが2,3億人しかいなのだ。核戦争が起これば、生き延びているのは中国人だと。実際核戦争になればどうなるかわかりませんが、この毛沢東の恫喝は政治的なものだといわれるでしょう。とうとうニクソン大統領が北京まで来るようになります。

最近日本は最貧国の北朝鮮にかき回されています。北朝鮮の金正恩はぼんくらの三代目と思われていましたが、アメリカのトランプを手玉に取り、もはや日本などいないかのような態度をとっています。まだ30代の若造にこけにされまくっています。日本人の大方はアメリカ第7艦隊によって北朝鮮を攻撃して欲しいと思っているようですが、これではクラウゼビィッツの考え方を理解していない証拠です。戦争は最後の手段です。かつて欧米が日本を封鎖したように、物質的のも精神的のも締め上げるのです。とうとう日本の軍部が跳ね返ったように、北朝鮮は日本にミサイルを打ち込みかもしれません。パールハーバーのように「正義の大義」が得られるのです。コリン・グレイの言うところ、「戦争の文法」で、この「正義の大儀」は同時に「強力な防弾チョッキ」になるのです。もはや外交とは二国間だけではありません。アフリカの名も知れぬ国の賛成票がこの「防弾チョッキ」を形成してくれるかもしれないのです。

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