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読書

コリン・P・A・ジョーンズ 手ごわい頭脳 アメリカン弁護士の思考法


    バッテリーとは自動車などの蓄電池のことだけだと思っていましたが、アメリカの法律用語では、「不法接触」という意味もあり、殴る蹴るの暴行や、痴漢が女の尻を触るのも「不法接触」となります。バッテリーという言葉一つで、日本とアメリカの法体系が違っていることがわかります。法体系というより、法律に対する考え方が大いに違っているというべきかもしれません。日本の刑法にしても、細かく犯罪行為を分類し、それに対する刑期も決まっています。日本の法律家はそれらをことごとく覚えないといけません。アメリカにも一応法律はできていますが、州によって少しずつ違っているので、法律の細かいことを覚えているわけではないのです。「バッテリー」という言葉でわかるように、大まかに分類し、いろいろな裁判例を通して、ある面自分たちで法律を作っていくという作用をしているのかもしれません。日本では「お上」が法律を作り、下々はそれを守り、それに逸脱して者は、杓子定規に罰せられるという風になりますが、アメリカでは利害の対立するもの同士が争い、過去の裁判例を引き出し、なおかつ自分たちの考え方も付け加え、新しい裁判例を作り出し、それがコモンセンスになるように、絶えず思考法を訓練することになります。簡単に言えば日本の裁判は記憶でありアメリカの裁判は思考であるといえましょう。例えばアメリカンフットボールの黒人の有名な選手が、白人の妻とその男友達を殺した容疑で裁判になりましたが、敏腕な弁護士のお陰でこの選手は無罪になっています。これがもし日本であれば、問答無用に二人殺していますから無期懲役か死刑になっているでしょう。どうして無罪になったのかは、この弁護士の裁判の持って行き方です。人種問題を前面に打ち出し、もしここで黒人の英雄である選手を罪に問えば、アメリカの人種問題が先鋭化し、この先何千にも暴動で死ぬかもしれない状況になるのと、たとえ殺したとわかっていてもあえて無罪にすることによって、人種問題が沈静化するのと、どちらがいいのか陪審員に問うたのでしょう。ここに至って殺人罪は蒸発し、人種問題にすり変えた弁護士の辣腕振りがうかがわれます。白人の弁護士はこの黒人から弁護料をたんまりもらい、この黒人は破産状態になり、後に強盗をして刑務所に収監されました。

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