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ダニエル・カーネマン ファスト&スロー 上

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ダニエル・カーネマン ファスト&スロー 上


        題名の「ファスト
&スロー」だけでは、飲食業界のファストフード店やレストランの話しかと思われますが、直感と熟慮という意味です。人はパッと見て、大略を掴んでしまいます。もともと「怠惰」である熟慮を使いたがりません。それを使うとエネルギーの消耗が激しいからです。直感で簡単に済まそうとするのです。そこでは正しいこともありますが、ほとんど間違っている場合が多いのです。

例えば「リンダの話」です。

「リンダは31歳の独身女性。外交的で大変聡明である。専攻は哲学だった。学生時代には、差別や社会正義に強い関心を持っていた。また、反核運動に参加したこともある」

それでリンだの現在の状況を次の八つから選ばさしたのです。

「リンダは小学校の先生である」

「リンダは書店員で、ヨガを習っている」

「リンダはフェミニスト運動の活動家である」

「リンダは精神医学のソーシャルワーカーである」

「リンダは女性有権者同盟のメンバーである」

「リンダは銀行員である」

「リンダは保険の営業をしている」

「リンダは銀行員で、フェミニスト運動の活動家である」

どこのエリート大学の優秀な学生も最後の、「リンダは銀行員でフェミニスト活動家である」を選んだのです。これこそ、「ファスト」(直感)であって、スロー(熟慮)に欠けるということになります。というのは、統計を考えてみると一目瞭然です。銀行員の大きな円の中にフェミニストという小さな円があるのです。少し考えるとわかることです。リンダは現在銀行員であるというのがもっとも確率的に高いといえるのであって、同時にフェミニスト活動家である人物はめったにいないのです。同時にこれは「アンカー」(錨)の問題にも関わって来ます。「差別や社会正義に強い関心を持っていた。また、反核運動に参加したこともある」という文章が、この確率問題を狂わしているということになります。

日々いろいろな事件が起こり、テレビではコメンテイターが解説したり意見を言っていますが、よくよく考えて言わないととんだ恥をかくようになるでしょう。

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