忍者ブログ

読書

ラス・カサス インディオは人間か


     インディオを金銀鉱山で酷使して、絶滅寸前までさせたスペイン人のひとりですから、インディなんか人間ではない、家畜や動物だから奴隷しにしても殺してもいいといった考え方を述べているのかとおもっていましたが、全く反対です。当時のスペイン人のインディオに接し方は、ラス・カサスもこの本で書いていますが、例えばインディオがお土産として鶏を持って来たら、それをインディオに投げつけ、インディオに家から金銀などもっと価値の高いものを持ってこさせるようにしていたということです。インディオはほとんど裸で、「玩具」のような弓矢と槍くらいしかなく、鉄砲やら甲冑で身を固めたスペイン人にしてみれば昆虫を殺すほどしか手間がかからなかったでしょう。これがヨーロッパ人の南北アメリカ大陸のインディオ虐殺の手始めだったのです。とうとう殺しすぎて、アフリカから黒人を移植して労働力のたしにしたというくらいです。

ラス・カサスはインディオの社会は穏やかで争いのない宗教心に富んだ敬虔な人々の集まりだと言っています。たとえいい争いをしても、殴り合いを見たことがないと言っています。現在の我々の価値観からすると、非常に奇異に見えるのですが、ラス・カサスは宗教の生贄のために人間を、それも自分の息子を生贄にするといったインディオの慣習を高い文明の象徴であると言っています。旧約聖書でアブラハムが自分の息子を神の生贄にしたように、ラス・カサスは宗教者であるので、インディオにアブラハムを見たということになるのでしょう。

ラス・カサスによって西欧文明の分裂が始まったといえそうです。西欧が世界を専横し思い通りに振舞うことが許されている思い込みが、ラス・カサスによってスローダウンされたようです。今では西部劇で見られるように、絶対悪はインディアン、それに立ち向かう白人という、能天気な構図は許されなくなり、反対に悪いのは他人の土地を侵害する白人で犠牲者はインディアンということになり、アメリカ建国当時の安閑とした白人たちの精神は現在では強く反省をしいられているようです。

PR

コメント

プロフィール

HN:
No Name Ninja
性別:
非公開

カテゴリー

P R