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中野剛志 資本主義の預言者たち

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中野剛志 資本主義の預言者たち


        今から考えると、かつての池田首相とその配下の通産省はシュンペーターを超えていたということがわかります。シュンペーターの考え方によりますと、資本主義は、「古い産業や制度を破壊し、新しいものを生み出す創造的破壊によって発展する。企業家は、企業を所有するとともに経営を行なう中産階級の精神と、家族のために資産を残すという動機に動かされて、創造的破壊に邁進する。しかし、創造的破壊のプロセスは、中産階級とその家族という制度をも破壊し、企業家は革新的な経済活動のための精神的原動力を失う。企業家に代わって生産や投資を担うのは、合理的で自動的に働く官僚制的な大規模組織であり、そして政府である。」やがてそれは社会主義国家になるという予想です。シュンペーターは、最終的にはスターリンが支配したロシアの監獄監視社会になると考えていたのでしょう。ところが池田首相とその時代は、労使の対立はありましたが、会社そのものが家族そのものであり、「日本的経営」で労使ともども「高い生産性と旺盛な技術革新を実現するため」日夜努力してきたことです。それに通産省もスターリン的な冷酷な管理ではなく、「ナショナリズム」によって何とか日本を経済発展させたいという熱い思いがあったので、企業家、労働者、官僚たちが日本という「共同社会」にまとまって切磋琢磨して、日本の高度成長の基礎をなしたということです。儲けはもちろんですが、それ以上に産業を育てるということに邁進していたのです。ところがバブルがはじけて、小泉首相になって、アメリカからニュー自由主義経済の考え方が入ってきて、短期的な儲けを重視する「経営法」が吹聴されます。アメリカで学んだ人たちが「金融資本主義」の到来を告げます。産業育成などはもはや時代遅れで、株式重視の短期でいっさんきに儲ける経営が推奨され、構造改革、リストラ、派遣社員化、と、企業で人材を育てることもなく、その場限りで、単にカネを儲ければいいのだという風潮になっていきます。これによって日本は「失われた」何十年もの時間を過ごすようになり、世界でもこのような風潮は何度もバブルをはじけさすようになります。いまでは修復できないような格差が生まれ、日本での貧困者はインドでの貧困者よりはもっと救いのないものになっています。今盛んに日本人がノーベル賞を受賞していますが、よくよく考えると、今、ノーベル賞をもらっている人たちは、池田首相以降、日本が高度成長時代に青春を過ごし、大学に入って研究した人たちです。現在の目先の利益だけを考える刹那的金融資本主義の世界では、じっくり将来を見つめて研究できる状況ではないかもしれません。何もかんでも早急に成果を出さないといけない状況では深い研究などできるわけがありません。将来日本は今の韓国のように他国が排出するノーベル賞の数の多さに怨嗟の声を上げるようになるかもしれません。

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