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読書

南伸坊 狸の夫婦


    店のお客さんで呉から来る人がいます。私より一、二歳上ですが、私と同じく結婚したことも無く、和歌山のドンファン如き大金持ちではありませんが、貸しマンションを持ち、余り使うこともないので、カネが溜まっていくばかりです。その人がよく言うのです。ひとり馬力と二人馬力は偉い違いじゃ、と。要するにひとりもんと、夫婦もんの、勢いの違いをいっているのでしょう。マンション経営以外に彼は呉服店を経営しているのですが、一年間に来る客は一人か二人しかいないようです。大きな家でひとり住まいで、一週間も二週間も人とおしゃべりすることはないのです。ですから私の店に来た時は、固まった唇の筋肉をほぐすようにしゃべりとおします。まるで土石流のように溜まったものを吐き出すのです。彼に南伸坊の妻・文子さんのような気楽に会話する女性が身近にいれば、もっと落ち着いたしゃべり方になるでしょう。とりわけ夫婦仲が良すぎるということもなくても、話し相手がいるということは何となく精神的に安心感をもたらすのではないかと思われます。ひとりぽつねんと一週間も誰とも会話が無く、いることは、修行僧でもない限り、耐え難いことです。日々淡々と過ごしつつも、些細な経験を夫婦で共有するということは、とりわけ老後の時期には是非とも必要なものだと思われます。

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