大下英治は今７６歳になり、いまだにトップ屋みたいなことをやっていて、著書の数も４５０冊もあります。たいしたものです。この方面の大家ですから、若いときのようにほっつき歩き、餌をあさる野良犬如きではなく、出版社やいろいろなところから資料が送られてきて、無理しないでもよく物事の有様が俯瞰できるような立場になっているのでしょう。おまけに自身がインタビューに来たといえば、相当たる人物も無碍に追い払うことはできない状態でしょう。取材はしやすくなっていますが、若いときのように鋭いかといえば、この本の取材対象が芸人であり、ヤクザや政治家ではなく、とりわけ極悪非道人という人々ではなく、反社会勢力から出演料をもらったという罪であり、以前は当たり前のことであり、昨今の「コンプライアンス」なるものに引っかかったということで、たいした問題ではないといえばそうであるし、大いに問題があるといえばそうかもしれませんが、いずれにしても国の進路を変えるようなたいした問題ではなく、この本では繰り返しも多く、冗長的なところもあります。