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安田善一郎 意志の力

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安田善一郎 意志の力

 
     安田善一郎のケチと私のケチとは質が違うようです。安田財閥の宗主として、当時の国家予算の8分に1に相当する資産の持ち主の善一郎のケチは「倹約」と呼ばれ、カネの余裕のない私のケチはまさしく惑うこともないケチであります。ところが大富豪の善一郎は82歳にして、寄付を求めてきた朝日平吾に短刀で刺されて殺されてしまいました。私は今のところ非難されることはたびたびありますが、あまりはやらない店の店主でありますから、寄付を求められることもなく、刺されてニュースになり、世間を喚起させるほどの人物でもないので、暗殺者としてもこのような貧乏人を殺しても自分の名が廃るだけです。朝日平吾は善一郎を殺した後自殺しましたが、彼の鞄の中に声明文をひそましていました。

「安田は世に害をなす守銭奴であり、自分が天誅を下す」

寄付をしようとしまいとはじめから殺すつもりであったのがわかります。私は金持も好きにはなりませんが、このような勝手思いの男も好きになれません。これが軍部の思い上がりにつながり、日本の破局をもたらしたものだと思っています。「天誅」だと言い出す人間は自分が正しいと確信していますから始末に終えません。世事一般の「正しさ」は常に揺れ動くものであり、不動であるということはないと思っていい。安田善一郎が書いたこの本でも、「倹約」第一で、これ以外に成功の道はないと説いていますが、やはり安田も時代の枠に取り込まれています。江戸で玩具屋の丁稚からはじまり、乾物屋、両替屋、銀行と伸びてきましたが、丁稚精神が基本で、辛苦艱難することで成功するのだというのが彼の言い分です。潮の流れが速い赤穂の鯛がうまいのは、そこで苦労しているからだという比喩も産まれます。平成時代、非正規社員はどう頑張ってもうだつがあがらないようです。善一郎は戦国時代の藤吉郎にいたく心酔していますが、平成の藤吉郎は永遠に旅館だったら下足番に留まるでしょう。

よくよく善一郎の経歴を吟味すれば、倹約だけで莫大な資産を作れなかったということがわかります。私だって若い頃から「ケチ」であったので、このトシの70歳近くなれば安田くらいの資産はできているはずなのにできていないということは「ケチ」だけではとうてい不可能だということです。善一郎にはここというときに山っ気と勇気があったことがあげられます。やはり金持ちになるのはどこかが違うようです。

善一郎のひ孫にはビートルズのジョン・レノンと結婚したオノ・ヨーコがいます。

最後、年寄りに勇気を与える善一郎の歌を記しておきましょう。

「50,60は洟垂れ小僧 男盛りは、8,90」

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