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読書

小城武彦 衰退の法則


    この本は小城武彦が50過ぎに取り組んだ博士論文で、これによって東大で経済博士になりました。東大を卒業し、アメリカの大学院で修士をとり、日本に帰りいろいろな会社の社長になっていても、博士というタイトルは何としても代えがたいものであったのでしょう。さてこの博士論文ですが、ベネディクトの「菊と刀」のような日本人論です。ベネディクトは文化人類学ですが、彼は文化心理学なるものを持ち出して、日本人が内包する性格が、会社の衰退をもたらす、「サイレント・キラー」になりえるとの解説です。私に言わせれば、いいも悪いも、まるで正倉院に中国の遺物が大切に保管されているように、今の中国人には欠片も見出せない儒教精神が日本人の心根に深く刻み込まれていて、それが会社の経営に禍をもたらしているとの感触を得ました。高度成長時代この儒教精神は有効に働きましたが、「失われた・・・」の時代ではそれがかえって足を引っ張る事態になってしまったということです。つまり簡単に言えば、「和を以って貴しとなす」ということです。最近はやった「忖度」もこの範疇にはいるでしょう。「空気を読む」とかでしゃばらないとか、先人に忠実なるというのも、日本人の麗しき性格なのですが、それらはこの「失われた・・・」の時代ではことごとくマイナスに作用しているということになります。このような時代では大きく舵を切らないといけない状態なのですから、「和を以って貴しとなす」では「船頭多くして船山に登る」ということになるのです。文化心理学を応用しなくても、日本古来のことわざで十分に、日本の会社の衰退を説明できることになります。

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