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東農大の醸造学科は慶応大のお坊ちゃんよりもっとお坊ちゃんらしいお坊ちゃんが入ってきます。何しろ日本中の造り酒屋のボンボンが入ってくるからです。近畿からきたお坊ちゃんは執事と飯炊きのおばあさんがついていました。造り酒屋は地方では名手ですから、政治家になったり、親の裕福な財産で遊学して学者になったり、文学者になったりする人が多い。中には裕福から貧困に転落した人もいます。俳句の種田山頭火の酒造は破産しています。小泉先生は発酵学の博士になり成功した部類に入ります。種田山頭火のようにノイローゼになっては何事も人生ではうまくいかないようです。その点小泉先生は酒を愛し、缶詰を愛し、駄洒落をめでて、人生楽しく暮らし、この本も実に嬉々として書いていたということがよくわかります。私が思わず笑った箇所を抽出しておきましょう。
「なんとなく、体がイカの缶詰の中のタウリンを要求して、肝臓を保護していたのかもしれません。とにかくイカの丸煮缶は私をイカしてくれたというか、良かった(イカッタ)缶詰でしたねぇ」
「それ以降、学生の身だというのに、月に一、二度はアン肝の缶詰を買ってきて、実家の酒蔵から送らせた酒を燗にして、その肴にしていました。小さなスプーンで取ってアン肝をペロロンと舐めては、熱燗をコピリンコと飲む。こうして、ペロロン、コピリンコ、ペロロン、コピリンコ、コピリンコ、ペロリンコと飲んだ(やった)わけです。実に美味かったですなぁ」
「ホワイトアスパラガスを切り揃え、食塩と砂糖を加えて水煮にしています。そこからゆっくりと、甘味と特有のうまみを放ってくれます。そして、ああ、美味しいな。うれしいな。アスパラを食べて、明日(あす)パラダイスだ!と、まあ、そういうことになってくるわけです。」
「当然、モモの缶詰のシロップもまたうまくて、ハァァ~うめぇ、ハァァ~うめぇとため息をつきながら、味わっていました。桃色吐息というのはあそこからきたのかもしれません」
このようなオヤジギャクばかりではなく、本格的な教養も出しています。牛と豚とでは中国人にとってはどちらがえらいかという問題です。もちろん豚です。豚の豕に屋根を示す・うかんむりをつけると「家」になりますが、牛にうかんむりをつけますと「牢」になります。要は牛は柵のある牢屋のようなところで飼い、豚は家の中で飼うということで、断然豚さまさまなのです。