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読書

早瀬圭一 奇人変人料理人列伝


        戦前もそうでしょうけど、戦後も中学校や高校を卒業して、飲食店に入り、そこで10年くらい、あちらこちらで修行して、自分の店をもつか、大きな店の責任者になったりしています。大学やそれ以上の学歴のある料理人はあまりいません。目先の聞く料理人はフランスやイタリアに行き、それらの国の言語を身につけ、帰ってくると、シェフという教授然とした威厳を保っています。今ではミシュランが料理人の博士号か修士号になっています。こうなるとひとり頭、料金は2万円を下りません。店は何ヶ月先も予約で詰まってきます。このような店に行きたがる人は多いものです。早瀬圭一もその一人です。昔から文人たるものは、こうした食い物のことを書きたがる癖があります。たとえ一回の食事が2万円以上であっても驚きはしません。ここには実業を何十年もやってきた人間に対する優越感とコンプレックスがあるような気がしています。早瀬圭一は毎日新聞の記者から編集員になり大学教授なったりしていますが、今までの経歴が、目の前に出された握りずし一貫ほどの価値があったかという不安と、いいや自分にはこれら料理人を蹴倒すほどの価値があるのだというプライドの間を行き来しているようです。だから有名な寿司屋に行く前から、「緊張感を高め」、いざ暖簾をくぐったら、まるで剣豪の宮本武蔵と思える店の主人と対峙するように、自らは塚原卜伝になりきって、眼光相照らすことになるのです。こうまでして、すしを食いたいとは、私は思いません。

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